強まる映画製作デジタル化の波
映画製作の現場からフィルムが消える完全デジタル化という流れは、今後も強まりそうです。それを促すもう1つの大きな理由があるからです。
編集と保存がしやすくなる
製作工程を完全にデジタル化することで編集と保存がしやすくなり、映画製作の効率化と2次利用の促進を同時に図れるのです。
米SGIの高性能ノンリニア編集機「HDインフェルノ」
ほとんどのデジタルデータが合成可能
例えば、米SGI製のワークステーションをベースにした「HDインフェルノ」と呼ばれる高性能ノンリニア編集機があります。これを使えば、ビデオ映像やコンピューターグラフィックス(CG)映像など、ほとんどのデジタルデータを合成できるという代物です。
二次利用向けの画像を自由に編集
いったん、このHDインフェルノの中でデータを生成してしまえば、映画上映用だけでなく、DVD(デジタル多用途ディスク)用やインターネットのウェブサイト用、2000年の年末から始まるBSデジタル放送用、さらにはポスター用といった二次利用向けの画像を自由に編集して引き出すことができます。もちろん、劣化のスピードが速いフィルムに比べ、画像を長期間保存しておくことも可能です。
最初に撮った画像の質に依存
ですが、作品(データ)を加工して再利用や保存するためには、当然、最初に撮った画像の質がよくなければなりません。
HD対応デジタルカメラが登場
フィルムのデジタルデータ化から、HD対応デジタルカメラでの撮影へ
これまではフィルムを現像してからデジタルデータ化して取り込んでいましたが、これでは時間もカネもかかります。HD対応デジタルカメラの登場で、効率的に作業が進むわけです。
スター・ウォーズのジョージ・ルーカス監督
デジタルデータの合成・保存・再加工
実際、ハリウッドで映画のデジタル化の先陣を切ったジョージ・ルーカス監督は、既に米SGIの協力を得て、デジタルデータの合成・保存・再加工が自在にできる巨大な情報システムを構築済みです。
2000年6月に撮影を始めたスター・ウォーズの続編では、ソニー製のHD対応ビデオカメラだけでなく、この情報システムも強い武器になりました。
日本における映画デジタル化
初期コストがネック
とはいえ、日本においてHD対応ビデオカメラが今すぐフィルムを駆逐し、急速に映画製作がデジタル化されるかというと、そうとも言い切れません。大きいのは初期コストの問題です。
最低でも1台2000万の投資
ジョージ・ルーカス監督が使ったソニー製HDCAM24Pの価格は、レンズ抜きで1台1200万円前後。レンズや録画装置、モニターなど周辺機器を含めれば、最低でも1台につき2000万円の投資が必要になります。
日本の映像制作会社にはまだ重い負担額
松下電器産業が提案するDVCPROシリーズなど、これより低価格のデジタルビデオカメラも登場していますが、零細企業が多い日本の映像制作会社にとっては、まだ重い負担額と言えます。
1080/24P規格のデジタルビデオカメラ
1080/24P規格のデジタルビデオカメラが実用化されたことで、映画製作の完全デジタル化への道筋はついたと言ってよいのです。ですが、日本でそうなるまでには、もう少し時間がかかるかもしれません。